TIR vs VAN: 投資の実現可能性を評価するための重要な指標

投資プロジェクトを分析する際、企業家や投資家の意思決定を支配する2つの財務指標があります:内部収益率 (TIR) と正味現在価値 (VAN)です。どちらも投資の収益性を判断しようとしますが、異なるアプローチを用いており、矛盾した結論に至ることもあります。どちらを選ぶべきか?その結果をどう解釈すればよいか?このガイドでは、その仕組み、実用的な応用例、制約について詳しく解説し、次の投資判断に役立ててください。

基本的な違い:VAN vs TIR

VANは、「価値の観点からどれだけの純利益を得られるか?」という問いに答えます。一方、TIRは、「投資の年率収益率は何%に相当するか?」という問いに答えます。

TIRは結果をパーセンテージのリターン率として表現し、規模の異なるプロジェクト間の比較を容易にします。これに対し、VANは絶対的な金額を示し、実際に得られる純利益を反映します。

もう一つの重要な違いは、VANは投資者が割引率 (主観的)を設定する必要があるのに対し、TIRは内部的にそのバランス点となる割引率を計算し、収入と支出が等しくなるポイントを見つけ出します。

正味現在価値 (VAN)の理解

VANは、将来のすべてのキャッシュフローを現在価値に割引き、その合計から初期投資額を差し引いたものです。言い換えれば、「今」受け取ることになるお金の価値を、時間の経過を考慮して評価したものです。

計算方法は?
VANの計算式は次の通りです:

VAN = (フロー年1 / ((1 + 割引率)¹ + )フロー年2 / )(1 + 割引率)² + … + (フロー年N / ((1 + 割引率)ⁿ - 初期投資

ここで、割引率はあなたの機会コストを表し、他の投資から得られるリターンを示します。

実例:プラスのVANを持つ収益性の高いプロジェクト

10,000ドルを投資し、5年間にわたり毎年4,000ドルの収益を得るプロジェクトを想定します。割引率が10%の場合:

  • 年1:4,000 / 1.10¹ ≈ 3,636.36 USD
  • 年2:4,000 / 1.10² ≈ 3,305.79 USD
  • 年3:4,000 / 1.10³ ≈ 3,005.26 USD
  • 年4:4,000 / 1.10⁴ ≈ 2,732.06 USD
  • 年5:4,000 / 1.10⁵ ≈ 2,483.02 USD

合計:15,162.49 USD
VAN = 15,162.49 - 10,000 = 5,162.49ドル

このVANが正であれば、投資は価値を生み出し、収益性があると判断できます。

VANが負の場合

例として、定期預金証書を考えます。5,000ドルを投資し、3年後に6,000ドルを受け取るとします。割引率は8%:

  • 6,000 / 1.08³ ≈ 4,774.84 USD
    VAN = 4,774.84 - 5,000 = -225.16ドル

負のVANは、将来のキャッシュフローが初期投資を補えず、機会コストも考慮すると価値がないことを示します。投資は避けるべきです。

TIR(内部収益率)の理解

TIRは、VANをゼロにする割引率です。つまり、投資が自動的に生み出す年率リターンのことです。

TIRが設定した基準の割引率(例:10%)を超えていれば、その投資は収益性が高いと判断します。逆に、下回る場合は魅力的ではありません。

TIRは、異なる規模のプロジェクトの比較に便利で、結果をパーセンテージで示すため、標準化された評価が可能です。

矛盾が生じるケース

VANとTIRが逆のシグナルを出すことはよくあります。これは次のような場合に起こります:

  • キャッシュフローの符号が複数回変わる(多重符号変化))複数の正負の変化)
  • プロジェクトの期間が大きく異なる
  • 割引率の変動が大きい

例:
プロジェクトAはVANが5,000ドル、TIRが12%
プロジェクトBはVANが3,000ドル、TIRが25%

どちらを選ぶべきか?
資本コストが15%の場合、プロジェクトAはTIRが下回るため魅力的ではないと思われがちですが、VANは正で高いため、絶対的価値を重視するならAが良いです。
逆に、資本コストが10%なら、TIRが高いBの方が魅力的に見えるかもしれません。

VANの制約事項

  1. 割引率の主観性:投資者によって異なる割引率を用いるため、結論が変わる可能性があります。
  2. 確実性の前提:将来のキャッシュフローを確実とみなすため、市場の不確実性や変動を考慮していません。
  3. 運用の柔軟性を無視:途中での方針変更や拡大、キャンセルの可能性を考慮しません。
  4. 規模の違うプロジェクトの比較に不向き:大規模なプロジェクトは単に規模が大きいだけで高VANになることもあります。
  5. インフレの影響を考慮しない場合がある:将来のインフレを調整しないと、結果が歪むことがあります。

これらの制約はありますが、VANは具体的な金額を示し、絶対的な価値を把握できるため、企業の意思決定には依然として重要です。

TIRの制約事項

  1. 複数の解が存在する場合がある:キャッシュフローの符号変化が多いと、複数のTIRが出てしまい、解釈が難しくなります。
  2. 再投資率の仮定:TIRは、途中のキャッシュフローを同じTIRで再投資できると仮定しますが、実際にはそうでないことが多いです。
  3. 非標準的なキャッシュフロー:符号が複数回変わると、TIRが計算できなかったり、誤解を招くことがあります。
  4. 割引率との依存性:内部的に計算されるものの、比較には基準となる割引率の設定が重要です。
  5. 将来のインフレの影響:将来のインフレが実質リターンを侵食する可能性があります。

一定の規則的なキャッシュフローや変動が少ない場合に、TIRは特に有効です。

適切な割引率の選び方

割引率はVAN計算の核心です。以下の方法で決定します:

  • 機会コスト:類似の投資で得られるリターンを基準に設定
  • リスクフリーレート:国債などの安全資産の利回りにリスクプレミアムを加算
  • 業界の標準:同業他社や投資家が用いる割引率を参考に
  • リスク分析:不確実性や変動性の高いプロジェクトには高めの割引率を適用

経験と判断も重要です。絶対的な正解はなく、状況に応じて調整します。

VANとTIRが矛盾したときの対処法

両者が逆のシグナルを出した場合は、次のように対処します:

  1. 仮定を見直す:割引率は適切か?キャッシュフローの予測は現実的か?
  2. 感度分析:割引率やキャッシュフローの変動により結果がどう変わるかを確認
  3. 資本制約がある場合はVANを優先:絶対的価値を重視し、資金の効率性を判断
  4. 規模の違いを考慮しTIRを利用:規模に関係なく比較しやすくなる
  5. シナリオ分析:さまざまな前提条件で結果を比較し、リスクを把握

よくある質問(FAQ)

Q:VANとTIR以外にどんな指標が役立つ?
ROI(投資収益率)、回収期間(ペイバック期間)、収益性指数(割引後キャッシュフロー/初期投資)、加重平均資本コスト(WACC)なども併用すると、より総合的な判断が可能です。

Q:なぜ両方を使うのか?
VANは「どれだけの価値を創出するか」を示し、TIRは「効率性の指標」を示します。両者を併用することで、よりバランスの取れた判断ができます。

Q:割引率を高く設定するとどうなる?
VANとTIRはともに低下します。これは、将来のキャッシュフローの価値を低く見積もるためです。リスクが高いときに高い割引率を使うのは一般的です。

Q:複数のプロジェクトの中から選ぶには?
資金が限られている場合は、VANが最大のものを選びます。資金に余裕があれば、VANが正でTIRが資本コストを上回るプロジェクトを優先します。

最終的なまとめ

VANとTIRは補完的なツールであり、競合するものではありません。
VANは絶対的な価値を示し、TIRは相対的な収益性を示します。
どちらも未来の予測に依存し、不確実性を伴います。

投資前には、キャッシュフローの仮定を精査し、割引率の妥当性を確認し、他の指標も併用し、リスク許容度を考慮し、個人や企業の目標に沿った意思決定を行うことが重要です。

投資においては、指標はあくまで羅針盤です。VAN、TIR、そして批判的な判断を組み合わせることで、より堅実な意思決定につながります。

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